3週間ほど前、たまたま本屋で、アイキャッチにもある勝海舟の写真を表紙においた文庫本を手にとりました。本の名前は『氷川清話』。勝海舟晩年の語録であり、明治30年頃、弟子やファンが本人にヒアリングをして書き上げたものらしい。
きっと中身は難しいものに違いないと高をくくっていましたが、ところがどっこい、古文の知識なんかもいらないくらいの文面です。江戸時代後期や明治初期になると、結構近代の話し方に近くなっているもんなんですね。
氷川清話の内容
結局お金がなかったため、数日後図書館で借りました(笑)江戸時代以前の人ともなると、人物像が全く分からず、ある種その人を神格化してしまい、「さぞかしスゴイ人だったんだろう」と、実際の本人以上の人物として空想してしまいがちです。
ですが、この『氷川清話』、本人の話した言葉通りに記載されており、想像の人物でしかなかった勝海舟という人物が、グッと近づいてきます。色んなエピソードがあって、楽しい本なのですが、例えば、人斬り以蔵(岡田以蔵)については、このように書かれています。
文久三年、(中略)、三人の壮士がいきなり俺の前へ現れて、ものをいわず斬りつけた。驚いて俺は後ろへ避けたところが、俺の側にいた土州の岡田以蔵がにわかに長刀を引きぬいて、一人の壮士を真っ二つに斬った。(中略)。後日俺は岡田に向かって「君は人を殺すことをたしなんではいけない。先日のような挙動は改めたがよからう」と忠告したら、「先生。それでもあの時私が居なかったら、先生の首は既に飛んでしまっていましょう」と言ったが、これにはおれも一言もなかったよ
という、生々しいエピソードが本人の言葉そのままに書かれています。あまり、本を読んで、歴史上の人物を身近に感じるということがないので、非常に新鮮でした。 日曜日の龍馬伝で、西郷吉之助が龍馬に「豚姫(西郷の愛人)」について話すシーンがありましたが、この件についても勝海舟は『氷川清話』の中でこういっています。
例の豚姫の話があるだろう。豚姫というのは京都の祇園で名高い・・・。もっともはじめから名高かったのではない。西郷と関係ができてから名高くなったのだが・・・。豚のごとく肥えていたから、豚姫と称せられた茶屋の仲居だ。この仲居が、ひどく西郷にほれて、西郷もまたこの仲居を愛していたのよ。
本当のことなんですね。他にも西郷と坂本龍馬のエピソードもあります。
坂本龍馬が、かつておれに、「先生はしばしば西郷の人物を称せられるから、拙者もいって会ってくるにより添え書きをくれ」といったから、さっそく書いてやったが、その後、坂本が薩摩から帰ってきていうには、「なるほど西郷というやつは、分からぬやつだ。少しく叩けば少しく響き、大きく叩けば大きく響く。もし馬鹿なら大きな馬鹿で、利口なら大きな利口だろう」といったが、坂本もなかなか鑑識のあるやつだよ。
『少しく叩けば少しく響き、大きく叩けば大きく響く』という坂本龍馬の有名な言葉は、ここからきているんですね。
他にも陸奥宗光や、大久保利通などにも言及してます。青空文庫でもこの『氷川清話』、現在校正中(2010年2月から校正中・・・)ですので、そちらをしばらくしてから見るというのも手ですし、図書館で借りて読むのも良いと思います。是非一読されてはどうでしょうか。
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